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新技術紹介 : バラスト水中の生物拡散防止装置

佐世保重工業(株)造船設計部 安田耕造

バラスト水の機械的処理法の概略図
バラスト水の機械的処理法の概略図
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1 段目のスリットの効果
1 段目のスリットの効果
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2 段目のスリットの効果
2 段目のスリットの効果
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船舶によるバラスト移動水は年間約 120 億トンにも達し,このバラスト水による生態系への影響が深刻化している。IMO ではバラスト水の管理を義務付ける法制化を進めており,早ければ来年早々にも何らかの決議がなされる見込みである。

バラスト水の影響をなくすためにはバラスト水を殺菌するなどして水中のプランクトン,菌類を死滅させる必要がある。しかし現状でなされているのは公海上でのバラスト張替えのみであり,生態系への影響を小さくすることは期待できるが影響をゼロにすることはできない。

現在考えられているバラスト水の処理法には,フィルター法,紫外線法,熱処理法,遠心分離法,科学的処理法などがある。いずれの方法も一長一短があり,実用化には到っていない。

その中で機械的処理法は比較的低コストで死滅効果の大きいことが実験で確認されている。配管中に 2 条のスリットを設け,このスリットを利用して次のような原理でプランクトンを死滅させる。

1 段目のスリット入口では流速が急増するためキャビテーションが発生しこの流れの急変によってプランクトンは分断される。1 段目のスリットで高速になった流れは 2 段目のスリットに衝突するときキャビテーションが崩壊しこのとき発生する高圧で死滅させるという原理である。

さらに,この方法は 2 次的な環境問題が発生しないこと,原理が簡単であり現存のバラスト装置への組み込みが簡単であることが注目される点である。一層の改良が進み,海洋環境問題の解決に寄与することを期待したい。

これは本年 10 月に開催された機能システム部会において講演された内容を紹介するものです。この記事の作成にあたり,ご協力いただいた(株)海洋開発技術研究所 城野社長にお礼申し上げます。

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